灰釉彩色象嵌鉄絵花文大皿
黒井千左が長年取り組んできた象嵌(ぞうがん)手法を使った大皿です。
大皿を成形した後、半乾燥させて土の表面を削り出し、異質の色土を埋め込みます。これが象嵌です。素地土の硬さと嵌め込む異質の土の硬さを同じにしないと、乾燥時の収縮率に違いが出て切れてしまいます。土は一旦切れると同じ土を埋め込んでもほとんど切れてしまうため、とても神経を使います。
千左の象嵌は、色土を線状に埋め込むだけでなく、色の濃淡によるグラデーション表現が特徴で、象嵌で濃淡を付けるのは高度な技術が必要とされます。
象嵌が終わって一旦800度で素焼をして、今度は鉄絵の具で器全体に繊細なタッチで花文を手描きしていきます。これも花の輪郭や中心など、大体のアタリを付けて描きますが、細い線でズレることなく描くのはとても難しいことです。
花文を描き終わると、虫明伝統の松灰釉を掛けて焼成して、完成です。52.5×7.5センチの大皿は、下地の色のグラデーションと花文が浮遊するかのようなタッチで描かれた力作です。
この作品は10月19日(水)から25日(火)まで岡山天満屋5階美術画廊で開かれる黒井千左作陶55周年記念展で展示販売されます。